スマート農業への取組・農業用ICTツール利用
スマート農業実証プロジェクト
実証農家のハウスに設置された光合成量計測チャンバーと、視察に訪れる関係者ら
JA西三河、愛知県西三河農林水産事務所、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構など11の機関でつくる「日本をリードする施設キュウリスマート農業実証コンソーシアム」は、2019年度より、国によるスマート農業関連実証事業の採択を得て進める実証事業「ICTに基づく養液栽培から販売による施設キュウリのデータ駆動経営一貫体系の実証」を行っています。
この実証事業は、下記の7項目の実現により、成果目標として10%以上の作業時間削減(1トンあたりの作業時間:89h/t→80.1h/t)と、30%以上の反収向上(26.5トン/10アール→34.5トン/10アール)を掲げるもの。同コンソーシアムは2019年4月から2021年3月末の2年間かけてこれらの課題に取り組み、より高効率で生産性の高い「スマート農業」を実現することを目指しています。
同実証事業が採択された、国によるスマート農業関連実証事業「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」(平成30年度第2次補正予算額6153百万円)・「スマート農業加速化実証プロジェクト」(令和元年度予算概算決定額505百万円)では、全国より252の課題提案があり、うち69個が採択されています。愛知県内で同実証事業に採択されたのはこの事業のみです。
関連ページ
農林水産省 スマート農業実証プロジェクト
令和元年~2年 「ICTに基づく養液栽培から販売による施設キュウリのデータ駆動経営一貫体系の実証」
令和3年~4年 「JA西三河における生産から流通・販売のデータ駆動一貫体系の実証」
外部サイト
スマート農業実証事業の視察受け入れについて
JA西三河の農業用ICTツールやスマート農業の取組について、視察をご希望の団体様は、下記の様式をダウンロードし、必要事項をご記入の上で以下の窓口までEメールもしくはFAXにてご連絡くださいますようお願い致します。
農業用ICTツール活用への取組
バラの栽培ハウスで「あぐりログBOX」の表示を確認する農家
ICT協議会 市内で農業用ICTツールを利用する生産者が集まり、情報共有を行う
JA西三河は、農家所得増大をめざす自己改革の一環として、ICTツールを活用した施設園芸の高度化を進めています。温度・湿度・CO2濃度の見える化により農家の気づきを引き出し、ハウス内環境の最適化により光合成能力向上から生産量増大につなげています。さらに機器導入の際の制度資金活用、灯油価格高騰時のコスト施策など、多段階の施策で産地力の増強をめざしています。
農業用ICTツールへの取組は2014年からスタート。西尾市内で盛んで技術革新の著しい施設園芸に着目し、技術力の高い農家とIT企業と緊密に連携し、現場のニーズに即した使いやすいツールを開発しました。
開発したのは環境測定器「あぐりログBOX」、食・農クラウド「Akisai(秋彩)」の2種。これらのツールは2015年度よりキュウリを中心にイチゴ・トマト・ハウスイチジク・バラ・菊の各部会で本格導入を開始し、温度・湿度・CO2濃度等の環境測定データや栽培履歴の共有を通して栽培技術の見える化・ノウハウ化を図っています。
「あぐりログ」による生産部会内でのハウス内環境情報の共有により、各生産者は、自分のハウスに必要な環境制御機器を自覚できるようになりました。例えば「2月の日中の時間帯にCO2濃度が下がってしまうのでCO2発生機を導入したい」や「3月に換気量が多くなると樹勢が落ちるのでハウス内の飽差を下げたい」などの具体的な導入動機ができ、CO2発生機やミスト装置の導入が加速しています。機器を使いこなす上でもモニタリング情報は有効に活用され、生産性の向上に大きな役割を果たしています。
「Akisai」は潅水・施肥・防除の作業記録を現場で簡単に入力出来るようカスタマイズしており、全年齢層の部会員にスマートフォンやタブレットの普及が進みました。入力・収集したデータは、栽培や経営に役立つ情報として紙やWebで生産者に還元しています。
その一例としてJA西三河きゅうり部会による『農薬使用ランキング』があります。これは直近の部会内で多く使用されている農薬や、昨年の同時期に使用された農薬のランキングを提供するもので、各生産者はこれを効果的な防除に活用しています。通常クラウドへの入力作業は生産者にとって義務感・負担感の強いものですが、同部会ではこのクラウドから有益なフィードバックがあることが入力への動機付けとなっています。